更新日 2022年1月5日
スキレットの具体的なシーズニング方法を説明していきます。 ここで紹介する方法は鉄フライパンや中華鍋にも応用することができるので、すでにお持ちの方は参考にしてみてください。
正しいシーズニング方法を知れば「スキレットは洗剤で洗ってはいけない」とか「油を塗って保存しなければならない」などの誤った情報に踊らされることもありません。 ここでは、できるだけ分かりやすく説明していきます。
シーズニングとは、ひとことで言うと「鉄鍋(スキレットや鉄フライパンなど)の本体に油の被膜を作ること」です。 油を加熱すると油の分子同士が結合して固化します。 この性質を利用して鉄鍋を油の膜で覆い、赤サビから腐食を防ぐことができます。
また、油の膜は食材のこびりつきを防ぐ効果もあるので、目玉焼きや餃子もキレイに仕上がります。 調理油も少なくて済むのでカロリーが気になる方にとっても嬉しい性能ではないでしょうか。
シーズニングを上手に仕上げるポイントは2つ。
この点を分かりやすくお話していきましょう。
まず、シーズニングに使う油は、大豆油やグレープシードオイルなどが向いています。 これらの油は乾性油(かんせいゆ)に分類されるタイプの油で、火にかけると網目のように結合しやすく鉄鍋を強固な膜でコーティングしてくれます。
反対にオリーブオイルはシーズニングに向いていない油の代表選手です。 この油は不乾性油(ふかんせいゆ)に分類されるタイプで、熱に強く加熱料理には向いているのですが、その性質が被膜の形成には不向きです。
こむずかしい理屈はここまでにして、シーズニングに適した油と、そうではない油を紹介します。
大豆油、グレープシードオイル、ヒマワリ油、べに花油
油の網目構造を作りやすいリノール酸を多く含みます。 また、ビタミンE(抗酸化物質)も含まれるので、油の酸化を防ぎながら強い被膜を形成する手助けをしてくれます。
アマニ油、えごま油
油の網目構造に適したリノレン酸を多く含むため理想的な油ではありますが抗酸化物質が少ないのが弱点です。 被膜の形成時に網目構造以外にも酸化も同時に進行してしまうので被膜がもろくなってしまう傾向があります。
一方で、美しい漆黒の被膜が形成されるので写真に映えるし、「もろい」と言っても簡単にはがれてしまうほど弱くはありません。 洗剤で洗ったくらいでは全く落ちないので実用性に問題はありません。
オリーブオイル
加熱に強く、フルーティーな香りが生食にも合うため、普段の調理には大活躍のオリーブオイルですが、シーズニングだけは避けてください。 強い網目構造を作りにくいタイプの油です。 やってやれないこともないのですが、コーティング性能は弱く、美しい漆黒にもなりません。
とくに、エクストラバージン・オリーブオイルは普通の安いオリーブオイルよりも、さらに網目構造を形成しにくく、香りが残ってしまうためオススメできません。
こめ油
軽い食感でクセもなく、私も好きな油ですがシーズニングには向いていません。 こめ油は精米した際に生じる米ぬかから作れるそうですが、油を分解する酵素(リパーゼ)を含んでいます。 グリセリンと油のエステル結合を加水分解してしまうので、どうしても被膜が弱くなってしまいます。
上記のオススメの油以外にもキャノーラ油やコーン油なども使えますし、海外ではアボカドオイルも人気のようです。 多少、化学的に弱くてもわざわざ高価な油を買うほどのことではありません。
日本ではアボカドオイルは一般的ではありませんから、近所のスーパーやドラックストアには置いていないと思います。 お店の方針にもよりますが、グレープシードオイルやヒマワリ油なども店舗によっては置かれていないことも多いでしょう。
安価で手に入りやすい油で出来たら理想的ですよね。 いろいろと試してみましたが、向き不向きはあるものの、ご自宅にある油で済ませられるのが一番だと思います。 被膜が剥がれてしまったら、またやり直すこともできますから。
次に火を入れる方法について説明します。 一番のオススメは魚焼きグリルです。 次にトースターとオーブン。 その次がガスコンロになります。 これも、すでにご自宅にあるものを優先してもらって構いません。 目的は「スキレットで美味しく調理すること」ですから、シーズニングは単なる下準備です。 できるだけ、お金も時間も節約した方がいいですよね。
そのためのポイントは、
この二点です。
ガスコンロですと火の当たっている部分は高温になるのですが、持ち手(つかむ部分)には熱が届きにくくなります。 魚焼きグリルやオーブンなら、持ち手も含めて全体に熱を加えることができます。
ガスコンロでもシーズニングは可能ですが、こまめに火の当たる部分を変えなくてならないので目が離せません。
また、油を加熱して網目構造を形成するためには火力も必要です。 私たちが接する加熱器具の中では、魚焼きグリルは庫内の温度が狭いので温度が上がりやすいため最適なんです。
油の種類にもよりますが、シーズニングのために油を加熱するには、およそ200℃から270℃に加熱する必要があります。 ガスコンロや薪ストーブのように下から熱するよりも、魚焼きグリルのように庫内全体から熱する方が持ち手にも火を入れやすいのです。
最もオススメする方法です。 見た目よりも火力が強く、機種にもよりますが庫内の温度は300~400℃になります。 9インチ(約23cm)位までのスキレットなら魚焼きグリルがオススメです。
魚焼きグリルよりも少し火力が弱いので火を入れるのに時間がかかります。 また、庫内が狭いので小型のスキレットのみの選択肢になるはずです。
機種にもよりますが庫内の温度は200~350℃まで上げられます。 200℃だとシーズニングには物足りないので、300℃まで上げられるタイプで行いましょう。
ただ、高機能なオーブンレンジの場合、赤外線センサーの安全機能でうまく加熱できないケースがあります。